造血幹細胞移植

心不全を有する患者に対して大量のCYの投与は心毒性の出現が懸念されます。

そこでCYを減量して一部をVP-16に置き換えるVP/rCY/TBIを前処置として使用する「心保護regimen」を使用して骨髄破壊的移植を行った成績の報告です。
移植の早期の心毒性の発生率、非再発死亡率は一般的なCY/TBIレジメンと比較しても変わらないという報告です。

造血幹細胞移植
Am J Hematol. 2008 Aug;83(8):635-9.

心不全マーカーであるBNPが、移植の合併症であるVODの発症と、その重症度に相関することを示した論文です。

さらに、移植後7日目までのBNP値が180 pg/mlを超えた場合、全生存率が悪くなる(ハザード比 5.3)という結果も示されています。

造血幹細胞移植
Bone Marrow Transplant. 2010 Nov;45(11):1631-7

造血幹細胞移植の際に臓器合併症のリスク分類として使用されるHCT-CIについて検討した論文です。

ここでは、HCT-CIが、原疾患のリスクが低い場合には有用であるが、高い場合にはその有用性が低くなることを示しました。
移植後1年生存者における後期イベントの発症には関与しないことを示しました。

造血幹細胞移植
Bone Marrow Transplant. 2010 Mar;45(3):513-20

造血幹細胞移植におよぼす鉄過剰症の影響を調べた論文です。

移植前のフェリチン値を鉄過剰症のマーカーとして調べたところ、600ng/ml程度の軽度高値であっても移植成績に関与していることがわかりました。
鉄過剰症非再発死亡率に強く影響し、特に骨髄非破壊的移植の際にその影響は大きいことが示されました。

造血幹細胞移植
Biol Blood Marrow Transplant. 2009 Feb;15(2):195-204

移植後の後期非感染性肺障害(LONIPC)をまとめた論文です。

LONIPCは慢性GVHDの一症状として出現し、生命予後を悪くします。
しかし、原疾患の再発率はLONIPCを生じている患者の方が低くなる事がわかります。
この論文では、発症後早期のステロイドの投与が、呼吸器症状と予後の改善に重要であることを示しました。

造血幹細胞移植
Bone Marrow Transplant. 2010 Dec;45(12):1719-27.

造血幹細胞移植後の早期の腎障害を検討した論文です。

移植後、軽度のものを含めると、腎機能障害は75%以上の患者に生じます。
腎機能障害の発症には、移植前のco-morbidity-indexが、深く関与していることがわかりました。
また、腎機能障害が軽度であれば、移植後の生存率に対する影響は少ないが、高度の腎機能症が生じた場合には、非再発死亡のリスクを6倍に高める事がわかりました。

造血幹細胞移植
Biol Blood Marrow Transplant. 2010 Jul 21

同種移植の際に、女性ドナーから男性患者への移植は予後が悪いとされています。

GVHDが増加することによる非再発死亡が増加することがその原因です。
この論文では、その影響が諸外国で報告されているものよりも大きいこと、また、その影響は疾患のリスクが低いときのみにみられるが、リスクが高いときには見られないということを報告しています。

造血幹細胞移植
Transplant Int. 2011, in press